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東京高等裁判所 昭和47年(ネ)1337号 判決

一二八二号事件控訴人・一三三七号事件被控訴人(一審原告という) 児玉幸雄

右訴訟代理人弁護士 坂根徳博

一二八二号事件被控訴人・一三三七号事件控訴人(一審被告という) 甘利利太郎

一二八二号事件被控訴人(一審被告という) 甘利宗太郎

一二八二号事件被控訴人(一審被告という) 甘利寿美江

右三名訴訟代理人弁護士 山花貞夫

同 片桐繁栄

主文

一審原告の控訴を棄却する。

右控訴費用は一審原告の負担とする。

原判決中一審原告勝訴部分を取消し、右請求を棄却する。

右訴訟費用は一、二審とも一審原告の負担とする。

事実

一二八二号事件について、一審原告代理人は、「原判決中一審原告敗訴部分を取消す。一審被告利太郎は一審原告に対し、金二八九万三、五〇〇円および内金二五二万三、五〇〇円に対する昭和四五年四月一日から完済まで年五分の金員を支払え。一審被告宗太郎、同寿美江は一審原告に対し、各自金三一一万円および内金二七一万円に対する昭和四五年四月一日から完済まで年五分の金員を支払え。」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、一審被告ら代理人は控訴棄却の判決を求めた。

一三三七号事件について、一審被告利太郎代理人は、主文第三、四項同旨の判決を求め、一審原告代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張および証拠の関係は、左記のほか、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

第一、一審原告の主張

一、一審原告が本件事故によって蒙った損害は次のとおりである。

(一)  治療費・入院雑費 九八万円

(二)  休業損害 一四七万円(昭和四三年一二月一五日から一五ヶ月分、月額九万八、〇〇〇円)

(三)  逸失利益 九二万円

(四)  慰藉料 一二二万円

以上合計四五九万円のところ、一審原告は損害の填補として一八八万円の弁済を受けたので、その残額は二七一万円である。

(五)  弁護士費用 四〇万円

よって一審原告は、一審被告らに対し、右三一一万円の支払を求める。このうち弁護士費用を除いた二七一万円については、損害発生の後である昭和四五年四月一日から完済まで、民法所定年五分の遅延損害金の支払を求める。

二、本件事故当時、一審被告ら三名は、曙町所在の飲食店「あ万利」と砂川町所在の「スナック」の二つの店を共同経営していた。そして一審被告利太郎は、常日頃、二つの店の作業に従事し、二つの店の往復に加害車を使用しており、本件事故は、一審被告利太郎が二つの店の往復に加害車を運転していた際に発生した。この場合利太郎が二つの店を往復することは、二つの店の仕事そのものということができる。したがって一審被告ら三名は、利太郎を通じ、加害車に対して支配を及ぼし、自動車使用による利益を享受していたものであって、その所有名義のいかんを問わず、自賠法三条の責任を負うべきものである。

かりに「スナック」が一審被告ら三名の共同経営でなく、利太郎の経営であったとしても、利太郎が二つの店の経営者兼従業員であったから、二つの店の往復は二つの店の仕事そのものであって、「あ万利」の経営者であった一審被告宗太郎、同寿美江は、自賠法三条の責任を免れない。

かりにそうでないとしても、一審被告ら三名は同胞であって同居し、同一世帯に属して生活していた。そして一方の店に専従するか、二つの店をかけ持ちするかの違いはあっても、いずれもみな、一日のすべてを二つの店の作業に従事していた。つまり二つの店の仕事は、右三名の家族協同体に属していたのである。このような状況で、利太郎が二つの店の往復に加害車を利用していたのであるから、右運行には、何らかの関係で家族協同体の構成員による支配が及び、家族協同体の構成員に利益が及んでいく。だとすれば、一審被告宗太郎、同寿美江も、本件事故について自賠法三条の責任を負わなければならない。

第二、一審被告らの主張

「スナック」は、一審被告らの弟である新太郎が、昭和四三年三月二二日、自分で店舗を賃借し、営業を開始したものであり、同人の経営にかかるものである。利太郎は、同人の経営する「あ万利」と右スナックが、一粁程しか離れていなかったことから、時々顔を出し、暇な時は手伝いをしていたにすぎず、経営には関与していない。いわんや一審被告宗太郎、同寿美江は全く無関係である。

第三、証拠

理由

一、本件事故が発生し、一審原告がこれによって傷害を蒙ったことは当事者間に争がない。

二、当裁判所は、一審被告利太郎は右加害車を運行の用に供していたものであり、他の一審被告らはこれに該当しないと判断する。その理由は、原判決理由記載のとおりであるから、原判決九枚目冒頭から同一〇枚目表八行目までを引用する。

一審原告は新たに、「あ万利」が一審被告ら三名の共同経営であるに加えて、「スナック」が右三名の共同経営であり、少なくとも一審被告利太郎の経営であり、かりにそうでないとしても「あ万利」および「スナック」の仕事が一審被告ら三名の家族協同体に属していたと主張し、これを前提として、一審被告利太郎が「スナック」と「あ万利」の間を往復する際惹起した本件事故については、他の一審被告らも責任を負うべきであるというのである。しかしながら、「スナック」は一審被告らの弟である甘利新太郎の単独経営であり、利太郎が暫時、従業員の監督、客の応待等を代行していたにすぎないことは前認定のとおりであるから、原告の右主張は理由がない。

三、そこで一審被告利太郎の、免責の抗弁および過失相殺の主張について検討する。

(一)  ≪証拠省略≫を総合すると、次の各事実を認めることができる。

本件事故現場付近には、別紙図面のとおり、本件交差点の南側において幅員二〇、二三米(ただし、中央部分に幅員約四米のグリーンベルトが設置されている。この点北側においても同じ。)、その北側において幅員約二二米の、南西から北東に通ずる通称「大通り」という道路と、幅員二四米(ただし、本件交差点付近においては、中央部分に幅員一二米の駐車場が設置されている。)の東西に通ずる通称「みどり川通り」という道路が交差する変形交差点があって、右交差点には車両用のほか横断歩道の歩行者用の信号機が設置されており、同所の車両の法定制限時速は本件事故当時最高四〇粁であったこと、本件交差点付近は前記各道路沿いに商店が並んでいる繁華街であるが、本件事故の発生した午前五時頃は小雨が降って薄暗く、一審原告と安藤成男以外に人通りはなく、車両の通行も殆んどなかったこと、一審被告利太郎は当日、砂川町にある弟新太郎経営のスナックで店の片付け等を手伝った後、他のスナックに立寄ってから帰途につき、加害車を運転して、高松町方面から立川駅方面に向い時速約五〇粁で進行し、本件交差点付近にさしかかり、本件交差点の手前で対面信号が青色を表示していたので、そのまま同交差点を通過しようとして、別紙図面①(以下の符号はすべて別紙図面表示のものとする。)の地点まで来たところ、右前方約一二米先のグリーンベルト上の点の辺を、うつむき加減によたよたと左の方に歩いている一審原告の人影を認めたこと、しかし歩行者信号が赤色であり、また、右グリーンベルトより車道上の横断歩道の方が、一段と低くなっていたので、一審被告利太郎は、一審原告がグリーンベルトの左端で立止るものと思い、そのまま進行を続けたところ、②点に至ったとき、小走りでグリーンベルトから降りて点に出てきた一審原告を発見し、(②点と点との距離は約八・五米)急ブレーキをかけたが間に合わず、点まできていた一審原告に自車の左前部を衝突させ(③点)、一審原告を点まではね飛ばし、自車を④点でようやく停止させたこと、一方、一審原告は、当日の午前三時半頃、立川市曙町の国際商事における浴場勤務を終えてから、近所のおでん屋で飲酒した後、食事をとろうと思って本件交差点付近まで歩いてきたが、食堂が見付からなかったので帰宅しようとして、うつむき加減に急ぎ足で横断歩道を渡り、グリーンベルトの左端で一瞬止って足もとを確めてから、そのまま左右も確認せずに再び急ぎ足で点に至ったとき、左方から接近してきた加害車に衝突され、点まではね飛ばされたものであること。

以上のとおり認められ(る。)≪証拠判断省略≫なお、衝突地点を点であると認定するについては、これに反する証拠がないわけではないから、いま少し仔細に各証拠を検討する。

(イ)  原審証人安藤成男は、衝突地点は自己の目撃地点である別紙図面点から、二米か三米の地点であった旨証言しているが、同証人は、衝突地点は大通りの左車線の中央より右寄りであるとも述べているので、前示の距離は正確性に乏しく採用し難い。

(ロ)  また、原審証人安藤成男、同原和男は、一審原告の転倒地点が、衝突地点の右前方である旨の指示説明をしているが、原審における一審原告本人尋問の結果によれば、一審原告は衝突、転倒の直後に、グリーンベルト寄りの地点に移動させられたことが認められるから、前記各証言は、移動後の地点を当初の転倒地点と誤解してされたものと推測することができ、当初の転倒位置についての証拠としては採用し難い。

(ハ)  さらに、真正に成立したものと認める甲第一九、第二〇号証および原審における一審原告本人尋問の結果のうちには、一審原告が横断歩道を殆んど渡り切ろうとした地点において衝突されたという部分があるが、右各書証はその作成経緯からみても信憑性が低いばかりでなく、結局一審原告の供述に基づくものとみることができ、一審原告の供述も左に掲げる各証拠に対比して、そのまま信用することは困難である。

(ニ)  他方、前掲甲第一〇号証によれば、当時路面には加害車のスリップ痕が残存していたものと認められるところ、右書証中の衝突地点の表示は、一審被告利太郎の指示に基づくものであるとはいえ、実況見分調書作成上の経験則からいって、衝突地点がスリップ痕を無視して記載されるとは考えられないから、一応当時の物的証拠に符合していたものとみるべきものである。そして前掲甲第二二号証における衝突地点の記載も、右指示地点に合致し、また、原審証人安藤成男の証言、原審における一審被告利太郎本人尋問の結果も、すべてほぼ右指示地点に符合するものである。

(ホ)  さらに一審原告の転倒地点が、衝突地点より左寄りの点であることは、前認定のとおりであるが、前掲甲第一〇、第二二号証、および原審における一審被告利太郎本人尋問の結果によると、一審被告利太郎は加害車を運転して、通称大通りの左側車線の中央よりやや右側を進行し、②点でブレーキをかけてから、車が若干左方に寄った状態で、一審原告を自車の左前部に衝突させたことが認められるから、このように加害車が若干左向きに走行中であったことに、一審原告が右から左に向い急ぎ足で歩いていたことを合せ考えると、転倒地点が衝突地点より左寄りになっていることは経験則に副い、衝突地点を前記のように認定する妨げとはならないものである。

(二)  一審原告は、右横断歩道を渡る際、歩行者用信号が「べったりの青色」であって、一審原告はそのことを確認した上で渡り始めた、と供述している。しかし右供述は、他の証拠と対比して措信することができないのであって、その理由は次のとおりである。

1(イ)  原審証人安藤成男の証言によると、同人は偶々本件事故現場付近を通過した際(別紙図面点)、衝突音によって事故の発生を知り、事故直後、加害車の運転者が車から出てきて、被害者を抱き起すまでの間に、歩行者用のの信号をみたところ、これが赤色を表示していたことを認めることができる。

(ロ) 次に証人市川章子の当審における証言によると、同人は新太郎経営の「スナック」の従業員であるが、もう一人の従業員である渡辺と、一審被告利太郎と三名で店の片付けをした後、他のスナック「三和」に立寄ったこと、そこを出て市川は自分の乗用車を運転し、一審被告利太郎は加害車に渡辺を同乗させて共に帰途につき、本件交差点の五〇〇米位手前で利太郎は渡辺を降ろしたのであるが、その際市川も車を停めて渡辺に別れのあいさつをした上、利太郎の車のすぐ前を先行して本件交差点にさしかかり、信号が青色であったので、そのまま交差点に進入し、これを右折して八王子市方面へ帰宅したこと、右折する際、後続の本件加害車をバックミラーで確認していること、以上のとおり認めることができる。

(ハ) そして一審被告利太郎は当初から、市川の車の後を四、五〇米の間隔で追従して本件交差点に至り、ずっと青信号を確認しており、衝突直後、一審原告の信号無視を責めた旨供述しており、この点に関する同被告の供述はかなり信憑性があるうえ、右の証人安藤成男、同市川章子の各証言にも符合するから、信用するに足るものということができる。

(ニ) もっともこの点について、原審および当審証人児玉照子の証言のうちには、「利太郎は病院で、信号のことなどいわなくても、自分が悪いことはわかっているので、これ以上自分を苦しめないでくれと、床に手をついて何度も謝った。」とか、「昭和四四年一月一二日、利太郎が松浦重雄と共に一審原告方に来て、信号のことは、自分が急いでいたし、疲れていたから、青色だか赤色だかわからなかったと話した。」という部分があり、前掲甲第二〇号証にも同趣旨の記載があるが、他の証拠による裏付けもなく、前記認定を左右することはできない。

そうすると、利太郎の車が点に達したのは、信号が青色に変ってから、少なくとも六・五秒後ということになる。なぜかといえば、市川の車が交差点に入ったとき、すでに信号は青色であったのであるから、その後利太郎の車が市川の車との間隔である四、五〇米(控え目な数字をとって四〇米として計算する。)を走行し、かつ南側横断歩道から北側横断歩道までの距離四九・七米(右の距離が四九・七米であることは≪証拠省略≫によって認められる。)を走行するには、時速五〇粁では六・五秒を要するからである。

2  そこで本件交差点の信号のサイクルについてみるに、≪証拠省略≫によると、昭和四一年一二月一日の信号機設置当時においては、左記信号図(一)のとおりであったこと、同四六年二月一一日以降いわゆる全赤信号表示方式が採用され、同四七年二月一日現在においては左記信号図(二)のとおりであったのであるから、これから全赤時間を除いたものは、左記信号図(三)のとおりであることを認めることができる。そして本件事故当時のサイクルが、右(一)と(三)のいずれであったかを示す適確な証拠はないが、本件事故当時は未だ全赤信号表示方式が採用される以前であり、かつ、信号機設置時から二年後にすぎないことからすれば、本件事故当時のサイクルは、設置当時のそれと同じであったものと推認するのが合理的である。原審証人原和男は、事故当時も、昭和四六年三月六日現在と比べて変ってないと思うと証言しているが、推測の域を出ず、採用するに足らない。そうすると、本件事故当時のサイクルは信号図(一)のとおりとなる。

信号図(一)

信号図(ニ)

信号図(三)

3  次に、≪証拠省略≫によると、人が急ぎ足でからグリーンベルトの左端まで歩くのに、約六ないし七秒を要することが認められるから、前記のとおり一審原告がグリーンベルトの左端で一瞬止ったことをも勘案すると、一審原告が点から点まで到達するのに、約八ないし九秒を要したものと推認することができる。したがって一審原告は、衝突の八ないし九秒前に横断を開始したことになる。ところで一方、衝突は、信号が青色になってから少なくとも六・五秒後であることは前判示のとおりであるから、それは信号が赤色になってから少なくとも一一・五秒後ということになる。

以上のとおりであるから、衝突の九秒前に点で、信号が青色であることを確認したというに帰する一審原告本人の供述は、信用することができないのであって、むしろ前掲各証拠によると、一審原告が横断を始める時、信号はすでに赤色であったと認めるのが相当である。

(イ) この点について一審原告は、本件事故当時の信号のサイクルは、むしろ昭和四七年二月一日現在のサイクルから、全赤時間を除いたものとみるべきであり、結局前記信号図(三)のとおりであったというのであるが、かりにそうであったとしても、一審原告が点において青信号を確認したという供述は、信号が青色に変ってから、少なくとも六・五秒後に衝突が起ったという前記認定事実と抵触し、採用の限りでない。

(ロ) なおこの点について、証人児玉照子の証言のうちには、「一審原告は病院で意識が回復した際、一審被告利太郎に対し、自分は青信号で渡ったのにどうしてはねたのかと怒っていた。」という部分があり、前掲甲第二〇号証にもほぼ同趣旨の記載があるが、いずれも前記認定に反し措信できない。

(ハ) また前掲甲第一〇号証には、「歩行者用信号機青のうちに通ろうとした」との記載(グリーンベルトの横断歩道上の「青」の記載も含む。)があるが、原審証人原和男の証言によれば、右は同実況見分調書の作成者である原和男の記入したものではなく、後に何者かによって付加記入されたものであることが認められ、かつ、≪証拠省略≫に対比して信用するに足らない。

(三)  以上認定の事実に基づいて判断すれば、一審被告利太郎は、加害車を法定制限時速四〇粁を超える時速五〇粁で運転したうえ、本件交差点の手前で青信号を確認したものの、自車の右前方約一二米のグリーンベルトの横断歩道上を、右から左に急ぎ足で歩いている一審原告を認めながら、一審原告が歩行者用信号に従い、グリーンベルトの左端で停止するものと軽信し、慢然と進行を続けたため、そのまま横断歩道上を進行して車道上に出てきた一審原告に、自車を衝突させたことが明らかであるから、一審被告利太郎には、速度違反のほか、具体的な道路、交通の状況に応じて、他人に危害を及ぼさないような速度、方法で運転すべき、安全運転の義務に違反した過失があったというべきである。してみると、一審被告利太郎の無過失を前提とする免責の抗弁は、その余の点について判断するまでもなく失当である。

しかしながら、一審原告においても、赤信号で横断歩道に入ったばかりでなく、その後はうつむき加減に急ぎ足で横断歩道上を歩行し、グリーンベルトの上から車道に降りる際にも、一瞬止って足もとを確めたのみで、信号を確認せず、左右の交通の安全をも確認しないまま、急ぎ足で横断を続けたため、点まで来たとき、加害車に衝突されたことは前記認定のとおりであって、一審原告には信号の確認および左右の安全の確認を怠った過失がある。

そして右両者の過失の程度に、本件事故の態様、当時の交通および道路の事情などを考え合せると、一審原告の損害については、八〇パーセントの過失相殺をするのが相当である。

四、ところで一審原告は、治療費等九八万円、休業損害一四七万円、逸失利益九二万円を超える損害を蒙ったものであり、慰藉料として一二二万円が相当であると主張し、その支払を請求するのである。

けれども、かりに一審原告主張の損害がすべて認められ、かつ慰藉料として一二二万円が相当であるとしても、その合計は四五九万円であるから、右過失相殺により、一審原告が一審被告利太郎に請求することのできる金額は、その二割に当る九一万八、〇〇〇円にすぎないというべきところ、一審原告はすでに一八八万円の弁済を受領したことを自認しているので、右請求は失当である。とすれば弁護士費用として四〇万円の支払を求める一審原告の請求も失当である。

五、以上のとおりであって、一審原告の本訴請求はすべて棄却すべきものである。したがって、一審原告の控訴は理由がないからこれを棄却し、一審被告利太郎の控訴は理由があるから、原判決中、一審被告利太郎の敗訴部分を取消して、一審原告の右請求を棄却し、訴訟費用の負担について、民訴法九五条、九六条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岩野徹 裁判官 中島一郎 桜井敏雄)

〈以下省略〉

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